舞台の壁一面には、マクベスの各場面をイメージした中世風の版画で飾られています。
場内が暗転し、ふと天井を見ると小さな光が瞬いています。あの荒野の星空なのかな~なんて眺めていたら、雷鳴とともに魔女登場。
いやもう、怖いです(汗)。白いカラーコンタクトが暗闇の中で光り輝いていますよ。口が裂けても「あのババアども!!」なんて言えませんって。
照明により、三本の短剣が浮かび上がるのが綺麗でした。マクベスが見ている幻を、共に目撃しているような錯覚に陥ります。嵐の中、窓の隙間から漏れてくる雷の明かりによって浮かび上がる狂気の一夜。凄かったです。
吉田鋼太郎さんのマクベス、根は小心者で、奥さんがいないと駄目な実直な人物、という印象を受けました。
魔女たちの予言を聞き、すっかり自分の世界に入り込んでしまっているのを、バンクォーやロスたちが生暖かく見守っているシーンが好きです。
食事会でバンクォーの幽霊を目撃し、机をひっくり返すわ椅子を投げつけるわの狂乱には、鬼気迫るものがありました。夫人が小さな体躯で必死に抱え込まなければ、罪の重さに耐え切れず全て喋ってしまったでしょう。あやされて眠りに着いたマクベスは、悪夢に脅える小さな子どものようでした。
そういえば、最期のあのシーンでは「ぎゃあ」っと悲鳴が上がってましたよ。
それほどリアルな○○でした。
安寿ミラさんのマクベス夫人はとてもスリム美しく、何処にそんな力が秘められているのかと思うほどの激情を、内に抱えている女性でした。権力争いに率先して入ることもなく、とにかく人がいい夫を懸命に守り立てる人。眠りを失ってしまったと嘆く夫に眠りを与え、罪の重さと自責をその身に引き受けた人。妻でありながら女ではない人。
マクベスと夫人は二人で一人の存在であるかのように思えました。お互いに支えあって生きている。だからこそ、マクベス出兵後に命を絶ってしまったのかな、なんて。
バンクォーの大塚明夫さん、めちゃ格好よかったです。場内アナウンスの渋い声も惚れ惚れです。
恨めしそうにマクベスを見つめる幽霊姿さえも、格好いいんだから。
“代々の国王の根となり父となる”魔女たちの予言の映像で、パンツ一丁にマント姿でノリノリだった子孫の皆さんが素敵でした。なんだか映画『300』思い出しましたよ(笑)はっちゃけてる魔女の皆さんと幻影さんたちも良かったです。悪夢といえば悪夢かも。
マクダフの中井出健さん、泣かせてくれます。家族を守るために、あえて離れ離れになったものの、それが裏目に出てしまったことへの慟哭。胸を打たれました。
直前にマルカムにとんでもない嘘を付かれて、忠誠心を試された後にこれですから(泣)
なんだかもうマクダフって踏んだり蹴ったりなんじゃないかと。
舞台と客席の距離が非常に近いこともあり、とても迫力のある舞台を味わうことが出来ました。
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